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1局目と2局目

電王戦タッグマッチの3局を振り返ります。何を考えてどういう基準で指し手を選んでいたか、気持ちで指していたか伝わればいいかなと思います。

1局目は抽選の結果、午前中から阿部習甦ペアとの対局に決まりました。
先手番から相矢倉に誘導してがっちりした将棋になるも、玉頭から仕掛けていったのは完全な独断で、戦いが始まる前に「こうやるとこう進むと思うんだけど、(10手先くらいの局面は)ポナンザの点数は何点くらい?」って感じで開発者の山本さんに聞いたら「マイナス100点~くらいですかね」と返事が返ってきて、「そうですか。でも仕掛けるって決めたんで」聞く耳持たずの無理な仕掛けだったようです。
迎えた下図↓
20130903佐藤阿部62手
この局面でのポナンザの推奨の1手は▲7六銀で、確かそれでマイナス150点くらいだっただろうか。実戦で自分が指した手は▲8三角。受けずに相手の飛車を責める手を選んだわけだけど、この手の評価はマイナス300点超えていたと思う。では何故▲7六銀と指さなかったのか?
この局面は▲7六銀△8五銀▲同銀△同歩という手順で迎えている。なのでここで▲7六銀と指すと、5手前の局面と比べて後手の△8四の歩が8五へ丸々一手得、一歩前進していることになる。
「点」でこの局面を捉えて最善手を探すとなれば▲7六銀は粘りにいく手として候補に入るけど、「線」としての流れの中で再度▲7六銀と打つのは明らかに5手前の局面から損してるので指せない、というのが自分の感覚だった。
山本さんに「ポナンザは▲7六銀推しです」と言われても、「そうですか、でも俺は▲8三角打ちますよ」と言って▲8三角を打っていた。以下△6五桂▲6六角△6四飛▲1五香と攻め合いに転じたのは自分の指し方だった。
以下はやはり形勢は苦しめでマイナス300点前後で、阿部習甦ペアの猛攻を凌ぐ展開となるのだけど、習甦の攻めがやや乱暴な感があり、ここはこーる君が自力で攻め手順組み立てて指した方が明らかに良かったのではないかと思う。この辺のペア将棋は難しく、少々形勢が良いと自身の判断とコンピューターの点数のどちらを信用、軸に進めていくか迷うところでもあるが。

後手の攻めが不発に終わり逆転模様で迎えた下図↓
20130903佐藤阿部94手
ここからの手順が▲6三歩成△6八金▲1九香△1五桂▲3八玉と進むのだけど、違和感を感じないだろうか。
▲6三歩成となんでもないところにと金を作り、大差ですよと言っておきながら直後の後手の攻めに必死に逃げ出すという感じ、同一人物が指しているとは思えない手の流れになってる。
図では自分の直感は▲1三歩と叩いて、△同銀に▲2五桂で一手勝ちと思ってた。ところがの局面で、ポナンザは▲6三歩成で1000点以上のプラスを叩き出していて、▲1三歩や▲1九香という手は何処にも見当たらなかった。「大差ならいいか、任せるか」と思い▲6三歩成と指し、△6八金に対してもう一度ポナンザの評価を見てみると▲5三とでやはりプラス1000点超えている。だけど、これは「え?」っていう感じで、先手が逆転負けするとしたら後手玉が絶対詰まない瞬間にラッシュをかけられるパターンしかなく、▲6三歩成~▲5三とはあまりに悠長すぎる。ポナンザの▲5三と以下の読み筋が△5九角▲3八玉△3七角成▲同玉△1七飛▲2七香△3五歩・・・のような順、それだけはないと自分で思った。
で、自分の直感は▲1九香だったから、山本さんに「これ本当?危なすぎる。▲1九香を探索させてみて」と言ってやってもらったら、30秒後くらいに「▲1九香はポナンザも素敵な手だと言っています」って言うんだよね(笑)
何が素敵な手だ、と苦笑いするよりないとこだった。▲6三歩成~▲5三とで逆転負けたらプロとして大恥じゃねーかって思ってね。そういう訳で▲1九香△1五桂▲3八玉と進むんだけど、▲5三とと指せない以上、その前の▲6三歩成は何だったのかと、そういうちぐはぐなことになっていた訳です。
以下は相入玉となりすっきりした勝ち方じゃなくなった訳ですが、とりあえず1つ勝てて良かったという将棋でした。


2局目は塚田プエラとの対局。先手番で横歩取りとなったけど、これはコンピューター全般が横歩の先手番が異常に強いことを知っていたからで、半年前の練習将棋でも身を持って知らされていた。
迎えた下図↓
20130903佐藤塚田66手
この局面に至るまで、何度かポナンザは▲7九歩という手を推していて、第一候補ではないにしろ必ずその手がどこかに入ってた。後手の飛車が7筋にいる以上、▲7九歩と打たないと▲6五桂とできないわけで、▲6五桂は桂と角を一気に昇華させる手だからやりたくてしょうがないのもわかる。だけどちょっと待ってくれよと、早く打ちすぎると以降7筋に歩は立たなくなるし、壁の悪形でもある。▲6五桂一点狙いだと相手に上手く受け流されたとき悪手になる可能性は大いにいある。で、8筋から継歩攻めをされたとき、数手先の図の局面が自分の中で「▲7九歩打つならここだ!」って思って、ここでポナンザ見たら、ぴったり▲7九歩が一番上に来ててね。「おまえもか!」って思って初めて気があったと思った瞬間でした(笑)
この後の指し手はポナンザ推奨の手を指していく展開になる。勿論自分で考えて手を探してもいるわけだけど、ポナンザの第一候補と被ることもあればそうでないときもあったけど、ポナンザの手より上の手を見つけることはできなかった。

優勢で迎えた下図↓
20130903佐藤塚田90手
▲3四歩でも▲2二銀でもどちらでも勝ちですよとポナは教えてくれていて、点数は2000点近かったかな。でも△3七銀成とされた形は危なくて、自身の将棋ならここで30分は考えてしっかり読み切らなければいけないところ。で、一応確認という意味で山本さんに「コンピューターは頓死しないですよね?」って聞いたら「いやぁ。ポナは結構頓死するんですよ(笑)」なんて笑って言うんだよね!
おい!って感じだったよ、俺を怖がらせてどうすんだよって(笑)
もうふざけんなよと思って再度自玉の安全確認、詰み筋は見当たらない。ポナも大丈夫と言う、時間ないしもういいやって感じで▲2二銀から攻めて行ってるわけです。
結果はポナは正しく自玉に詰みなしで勝ったわけですが、この将棋に関してはポナンザの強さを再認識したっていうか、ディープインパクトに乗った武豊さんの気持ちが少しわかりました(笑)


次局は決勝、三浦GPSチームとの将棋は長いのでまた次回です。



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1げっと

非常に面白い感想ですねえ、ポナンザと始めて気があったって描写が面白いです。

船江さんや三浦さんも、解説では友達やおかんみたいな感覚感じてたっぽいし、将棋っていう言語で会話できてていいなって思いました。

コンピューター将棋ってなんか冷たいイメージしますけど、ものすごく将棋の強い赤ん坊って感じもします。もしかしたら、逆に一番怖がるべき相手ではない?のかもしれませんね。

No title

とてもおもしろい記事です。
指し手が決まっていく臨場感が伝わってきました。
慎一さんとポナのやりとりも興味深いです。

慎一さんのがんばりがどうにか報われてほしいと思っていたので今回の優勝は本当に嬉しいです。
おめでとうございました!

No title

真剣な中にも山本さん&ポナとの微笑ましいやり取りがあって
面白いです。しかし佐藤先生は文章読みやすくて素晴らしいなあ。
いつか時間があったら将棋小説書いてくださいなw

No title

大変面白い記事でした。こんな臨場感あふれる自戦記を無料で読むことができるなんて、感動です。
私が中継で見て抱いた印象よりも、ずっと棋士の先生とソフト、そして開発者の方が協業されていたのですね。
佐藤先生と山本氏、そしてポナンザのやりとりがとても微笑ましく、カッコいいです!

良かったです。

 お疲れ様でした。
 ponanza の候補手と評価点は、大いに参考になりますね。
 解説がお上手なので、今後、勝率アップと共に、名解説を期待します。

頓死

>「いやぁ。ポナは結構頓死するんですよ(笑)」

本当にポナンザ頓死しやすいみたいですよ。
山本さんがニコ生に出演した時に
3回ぐらい頓死しやすいって言ってたのを
聞いた気がします。
結構ってどれくらいなんでしょうかね?(笑)
だから嘘は言ってないんですよ山本さん。

楽しい解説ありがとう御座います。
三浦九段・GPS戦も楽しみにしてます。




No title

これは面白いです! 個人的には山本さんとのやり取りが素敵ですね。なんか、本音がぶつかってるなぁって感じで。
三浦九段+GPSも期待です。やっぱり、ブログを更新して貰えると楽しいので、本業頑張ってください! 応援してます

頓死2

6番目のコメントした奴です。
コンピューターの頓死の確率気になったので調べました。

aki.の月記
http://d.hatena.ne.jp/ak11/20090901

このBlunderってソフトを作ってる人のブログによると

1 頓死な時に頓死じゃないと判定してしまう確率:0.5%前後
2 頓死じゃないときに頓死かも?と判定してしまう確率:65%前後

だそうです。
ポナンザもBlunderと同じような性能としたら
稀にポナンザは頓死するが正解じゃないでしょうか?
それが山本さんの主観だと「ポナンザは結構頓死する」になるんだと思います。
頓死したら印象にかなり残りますからね。

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

No title

いやあ面白すぎる!
実際の試合も良かったですが、この自戦記も良いですね。
まるでメインディッシュのあとのデザートのようですばらしいです。
あの試合で感動した人すべてに見せたいです。
私も時間があれば、もう一度タイムシフトをみながら読んでみたいです!

No title

素晴らしい自戦記ありがとうございます。臨場感アリ!面白すぎる!!
決勝自戦記が待ち遠しいです。

No title

永世名人2人に解説された時の心境をお伺いしたいです

No title

こ、これは面白いww

最初は結構、コンピュータと対立関係にあったみたいですねえ。
コンピュータが強いと知っているからこそ、それに反する手を指すことには、結構勇気が要ると思います。
それがどのような過程で、信頼関係というか役割分担が決められて
行ったのか。興味があります。

実際、今回の参加棋士の中で佐藤先生が最もコンピュータを使いこなしているように感じました。
何より、「この手は無いし数手後にはこうなるから、そこから評価値とか先に読んでおいて」といったスタンスが素晴らしい。コンピュータから正しく情報を引き出すためには、おそらくベストの方法だったと思います。
勿論、ポナンザ&山本氏の献身的なサポートも光っていました。山本氏がオペレータに徹することにより、ポナと佐藤先生の間を取り持っていたように見えたのは、やや邪推気味でしょうか。
いち視聴者の視点から言えば、佐藤先生のチームが、一番タッグらしいタッグだったように思えます。

皆さんの書き込みにもありますが、佐藤先生の文章はとても読みやすく、本音と臨場感がストレートに伝わって来ます。
次回も楽しみにしてます。特に決勝戦終盤の差し手が楽しみです。

No title

是非お聞かせいただきたいことがあります。

山本さんは素人にしてはかなりの棋力の持ち主ですが、そこらへんでポナとのやりとりをスムーズに通訳できたとかいうことはないでしょうか。他の開発者とは棋力的に相当な違いがあるのでポナ-プロ間の通訳者としての能力が優れていたことが結果に好影響を与えていたりしたのだろうかなどと思ったのですが、そこらへんの印象をお聞かせ願えればと思います。

感性と合理性のクロスオーバー

あ、第2候補手以下も確認できた感じですね。
ルール説明では、「最善手を確認しながら」とあったので、
てっきり分岐は見られないのかと思っていました。
プロが指したい手の評価値が見られることは、説明がありましたけど。

ソフト制作者の方は「わりとponanzaの手が無視されていて」と
おっしゃっていましたが、この記事を読んで、
「わりとponanzaの手が参考にされているな」と思いました。(笑)
しかも、ただ自分の信念を通しているのではなくて、
かなり合理的にサトシン先生が、自分の指し手とソフトの指し手から
選ばれていて、非常に感心しました。

▲7六銀と指さなかった理由は、凄く納得できて、
ソフトは評価値が悪い時に、単なる手損でも手数の上で粘れる手を
指してしまうという欠点があるので、まさにその通りですね。

終盤の判断も、ソフトは「安全勝ち」という概念がないので、
危険な変化でも、評価値が高ければ最善と判断してしまい、
そこはソフトの長所でもあり、短所でもあるので、
サトシン先生の判断は、確実に勝利を掴む上で必要なことですね。

横歩取りは、昔はソフトが苦手な戦形で、開発者が避けていたのに、
現在はプロを凌ぐ実力だとは、本当に驚きです。

頓死に関しては、ソフトは手数が長いと簡単な並べ詰みでも
見落とすことがありますが、図の局面は自玉が狭いので、
見落とすことはないような気がします。
でも、時間がある場合は、プロがしっかりと確認した方がいいですね。

こうして、プロの読みと判断を詳細に説明してくださるのは、
非常に参考になり、ユーモアもある文章で、凄く面白いです。
それでは、次回の記事も楽しみにしています。

No title

棋士がソフト(とその開発者)とどう関わって着手を決めていたかを知りたかった。この記事はそのまさに知りたかったことがすべて書かれています。ありがとう。次回も期待しています。

No title

早くブログ更新してよ!
と思っていたら、こんなに充実した内容で大満足です(^^
対三浦・GPS戦もしっかり読みます!

棋士、騎士成る

更新ありがとうございます。
ニコニコ生放送で、今回のプロモーションを見たときは、
ただただ「面白く編集するなぁ~””」と思っていたのですが、
当日になってみると実際に先生方が{あのロボット}に搭乗して戦っているように感じました。しかしそれを乗りこなしていたのは佐藤先生だけだったように思います。山本一成さんと共にponanzaと向き合うさまは某アニメのようでもあり、また馬にまたがり闘う戦士のようでもありました。やんちゃな部分もあり手綱を引くのは大変だったようにもうかがえますが、まるで生き物の様なそれも一つの味のようで興味深いです。名騎手さながらの気持ちの捌きに皆心打たれました。
決勝の解説も楽しみにしています。

No title

将棋ソフトとプロの第一感の違うところと同じところ。
開発の山本さんの自己主張?の控えめなところ。
サトシン先生がどう判断したのか?ソフトをどのように使ったのか?
とても楽しく拝読させていただきました。

でも、何よりもファンとしてうれしいのは、電王戦2.1タッグマッチ前の日記から、電王戦後に、サトシン先生のお気持ちが前向きに変わられたことです。

次の三浦先生&GPSとの決勝戦。
そして、1回戦~決勝戦を通じて、変わった事、変わらなかった事、などもブログで拝読できれば幸甚です。

No title

放送、拝見いたしました。
本番前にはいろいろと思うところのある企画だったように
ブログなどからは推察されましたが、
放送後の記事はとても晴れ晴れとしていて
また、放送中気になっていた
山本さんとのやり取りも垣間見えて
放送とセットで本当に楽しめました。
決勝戦の感想も楽しみにしております。

将棋の面白さを魅せていただき本当にありがとうございました。
これからも、応援しております。

No title

初カキコします。
あの名勝負の裏に、こんなドラマがあったとは・・・
おもしろいです。漫画化OR小説化希望します・・・ってくらいです。

なんだかドラゴンボールで悟空とピッコロが力を合わせてラディッツを倒したのを思い出しました。

第三戦目の自戦記も楽しみに待ってます!

No title

電王タッグ選手権優勝おめでとうございます。

タッグ選手権ならチャンピオンベルトでしょう。なのにトロフィーですか。ドワンゴは思慮に欠けてるっ!

「俺のベルトは渡さない」と言ってほしいところです。

元気ですかっ、慎一先生!

No title

いやぁ面白い!
ディープインパクトのくだり、なんてわかりやすいw

機械と人間って、やっぱ共存共栄が一番素敵な形だと思います。
近未来SF物の映画って、だいたい機械と仲良くしてるか、機械と戦争してるかのどっちかじゃないですかw
たしかナイトライダーも最初はKITTを気味悪がって、こいつを外してくれ!ってマイケルは言っていました。
サトシンさんは正に現代の騎士(棋士)ナイトライダーですねw

No title

船江先生が「3手先までは普通に読むんだけど10手先くらいにアマチュア以下の手が混じっている。」とツツカナのことを言っていましたがポナンザも似たような部分があるんですね。

実際こうやって佐藤先生の指した経緯を読んでみると山本さんが言っていた感想もまんざらウソではなかったように思えますね。(笑)

しかし面白いです。三浦先生との記事が楽しみでしょうがありません!

臨場感があって面白いです。
将棋だけじゃなく、やっぱり慎ちゃんには溢れんばかりの文章の才能を感じます。
無料公開が惜しく感じるくらいです。
優勝おめでとーでした。

No title

優勝おめでとうございます。

ポナは活気あってお茶目でうっかりな性格なんですね。
佐藤さんとポナとの掛け合いを知れてとても面白かったです。

 コンピュータは別次元な将棋を指し、人がどこまで自分を迷わずいられるのかと思ってましたが、「負けたら自分のせい」という覚悟で御していたと知り、まさに人と機械がタッグを組んで優勝したのだと感動いたしました。

No title

この記事、永久保存版だよ、マジで。

No title

優勝おめでとうございます!僕もこの将棋をみて感動した人間として水を指すようで悪いですが、1三馬は三浦九段が考えた手ではなく、GPSが推奨した手と言っていたような気がします・・・。
プロフィール

月下のシン

Author:月下のシン
2008年10月1日付けで棋士となった佐藤慎一です。
気づいたら早いもので4年目に突入!
宜しくお願いします。

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