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緩急のピッチャー

プロと呼ばれる者、自分のセールスポイントがなくてはならない。
ピッチャーで言えば自慢の剛速球や必ず三振を狙える決め球。
しかし、自分では速球が勝負球と思っていたのに、プロの世界に入ったらそれは棒球のように弾き返さる・・・。
そんなことはよく聞く話。

将棋指しとして、自分も「ここが自分の武器です」とはっきり言えるようでないといけない。
しかし現状ではなかなかそういったことが言えない、はっきりみつからない。
奨励会時代から、強い人の棋譜を並べて同じような将棋を指すことに流され過ぎてしまったのかもしれない。


そんな中、先日2月6日の王将戦予選、中村(亮)戦で自分らしい味のある手を(と思う)指せたので解説します。
先手の角道止めずの四間飛車から序盤いろいろ変化して、振り飛車穴熊VS居飛車銀冠に組みあって迎えた下図。(後手がわたしです)

(新規棋譜)67手

後手がいくらか優勢なのは間違いないですが、勝ちまではまだまだ道のりは長い局面。
先手の▲37桂は勝負手。左辺の角銀がひどい形で捌く目処が立たない中、次に▲25桂△24角▲45歩△同歩▲76銀!という攻めを狙っていて、こうなれば先手の角銀が復活して迫力のある攻めが繰り出せるところ。もちろんそうばれば形勢は先手に傾きます。

実戦は図から△26歩▲同歩△55歩と進めたのが手応えを感じた手順。
まず△26歩は、これは先手の穴熊を崩すための後手の切り札。これをいつ突くか、早すぎず遅すぎずのタイミングが大事。で、ここの場面、先手が次に▲25桂とその歩をパクってやるぞと来た瞬間の突き捨てで、穴熊が弱体した瞬間でもありベストタイミング。これは打者が踏み込んできたときに内角に一球直球を見せた感じ。
次に△55歩は、外に緩いカーブを投げるイメージ。指し手の意味としては先ほどの先手の捌きを封じていること、△64銀に働きをかけていることなどがあります。
後手は△55銀の形になれば△74飛車の横利きが44の地点まで通り、不敗の態勢を築けます。
それを嫌ってここで暴れてくるなら、バットの芯を外せてるでしょ、というのが△55歩の意味。


前に何度か負けた将棋で「緩急を使えなかった」というようなことを自分で言ったことがあるのですが、自分の場合は人より速い剛速球があるわけでも、三振を取れる決め球があるわけでもないと、今のところ感じてる。
自分の持ち味としては緩急をつけたピッチング、速い球のあと緩い球を投げたり、その逆も然り。
なぜそう感じるのかというと、1局の将棋の中でこういった手順が指せると非常に好調を感じるからです。攻めて攻めて攻めまくってるときや相手の攻めを受けきりにいっているときよりも、戦いの中でこういった手順が指せてる時に好調な流れを感じます。
緩急っていうのはかわして逃げることじゃなく、直球の前に緩い珠を見せておくと、より一層直球が早く感じるという、次の手の威力を倍増させるようなイメージです。

コンピューターには直球一本じゃほぼ打たれるでしょう。
今の自分はそういうタイプじゃないし、コンピューターは直線的な読みは滅法強い。
今は自分の持ち味を磨いて、本番でも緩急を付けた手順が組み立てれるかどうか、そういった展開になりやすい戦形を研究し、そこに勝負の行方を託したいと思ってる。
(でも、わたしの後ろに控えてる「やれる男」は直球一本で仕留めてくれるのかな!?笑)



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No title

タイトル戦のニコ生を観てたら、お知らせ欄に「電王戦出場の佐藤慎一四段も生登場~将棋棋士の人狼~」ってのが目を引いて何事かと思ったら、人狼というゲームにサトシン先生も出場するという事なんですね^^
てっきりサトシン先生が狼のように自分を語るイベントにでも出るのかと思っちゃいました。
そのゲームはよく知りませんが、心理戦のゲームらしいので楽しみです。プロ棋士の性格の悪い部分が見られるのでしょうか^^

No title

人狼、楽しみです。
頭の良さが効くのか、心理操作が効くのか・・・

電王戦、勝ってください。

身勝手なファンより

>将棋指しとして、自分も「ここが自分の武器です」とはっきり言えるようでないといけない。
>しかし現状ではなかなかそういったことが言えない、はっきりみつからない。

 申し訳ないのですが、現状佐藤先生は、「特徴のない棋士」であるとか「可もなく不可もない棋士」と多くのファンからみなされています。厳密に言うと、「このブログは面白い」とか、「解説がうまいからギターパフォーマンスにも交換がもてる」とか、「人柄に好感が持てる」「普及にも一生懸命だ」と、盤外では好評価が多いです。ただ、肝心の対局面では上のような低評価をされることが多いようです。

 こんな失礼なことをあえて書いたのは、上述のような低評価を正面から受け止め、それを認めたうえで、しかも自虐的にならないで、何とか「緩急をつける」という形でそれを打破しようという姿が見受けられたからです。逆に言えば、問題解決のための具体的なイメージが先生の中で見えてきて、もうそろそろ克服できそうだからこそこうして自分の弱点を見据えている、という余裕みたいなものが感じられるのです。

>自分の持ち味としては緩急をつけたピッチング、速い球のあと緩い球を投げたり、その逆も然り。
>なぜそう感じるのかというと、1局の将棋の中でこういった手順が指せると非常に好調を感じるからです。攻めて攻めて攻めまくってるときや相手の攻めを受けきりにいっているときよりも、戦いの中でこういった手順が指せてる時に好調な流れを感じます。
>緩急っていうのはかわして逃げることじゃなく、直球の前に緩い珠を見せておくと、より一層直球が早く感じるという、次の手の威力を倍増させるようなイメージです。

 実に具体的ですし、また一般論ではなく、「わたしにとってはこうだ」というレベルに踏み込んだ、まさに「ここが自分の武器」というのを見つけつつある感じがひしひしと伝わってきます。かつてのブログでは「自分は弱い」「強くならなければ」といいながら、どうしても自虐であったり、焦りであったり、意欲の空回り、といった要素が見受けられましたが、今回の記事からは、そのようなかつての自分のあり方を客観的に見据えた上で、その克服のための具体的な方向性がようやく見えた、という安堵感や自信を感じさせます。

>コンピューターには直球一本じゃほぼ打たれるでしょう。
>今の自分はそういうタイプじゃないし、コンピューターは直線的な読みは滅法強い。

 ファンからは、佐藤先生が電王戦に出ると聞いて「はあ、佐藤慎一?はっきりいって場違いだろう」という意見がちらほら出ていました。しかしながら、この記事を読んでみたら、佐藤先生において、この「電王戦への挑戦」をきっかけにして、「自分の武器」をみつめなおし、かつそれを手に入れようとしている、という点ではっきりとプラスになっているように見受けられます。正直、今までは、私も先ほどの「失礼なファン」と同じような印象を持っていたのですが、この記事を読んで印象を改めました。せっかくですので、COMにも勝ってください。応援しています。身勝手なファンより
プロフィール

月下のシン

Author:月下のシン
2008年10月1日付けで棋士となった佐藤慎一です。
気づいたら早いもので4年目に突入!
宜しくお願いします。

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